2018年9月21日にマリアナ諸島付近で発生、猛烈な威力を増しながら日本に近づき、同月30日に和歌山県から上陸、その後スピードを速めて関東を横断した台風24号は、各県に深刻な被害をもたらしました。

我が街、川崎市もその猛威に曝され、各所で甚大な被害を受けました。

深夜、3階建て築15年ほどの自宅で寝ていた私も「あぁ、これは明日からは大変なことになりそうだ」と、地震のように揺れる寝室で確信したのはつい6ヶ月ほど前。
朝起きるとまばゆいほどの台風一過による朝日と、目を疑うほどの街の変わりように、数ヶ月は大変なことになると覚悟を持ちました。

実際にこの台風による修繕依頼等は去年末まで続き、現在は落ち着きを取り戻していますが、これは弊社のみならず業界の仲間、地場の工務店等、屋根や外壁や雨樋等の外装に関係する業者は多忙を極めたと思っております。

その裏には甚大な被害を受けた方々がいらっしゃって、商売といえども何ともお伝えしようがない無力感と、改めて自然の猛威の恐怖感を感じたものです。

被災された方々のお宅に伺うと、「何とかしてください」「早く来てくれて助かりました」等々、悲惨な状況ではありますが、私のような人間の存在意義を改めて確認できたような、何とも不思議な感覚を昨日のことのように思い出します。

台風被害=火災保険は常識です

火災保険という名称って、少々ミスリードだと思いませんか?
自宅に火災が起らないと使えないようなイメージに感じてしまう方々もいらっしゃるかもしれませんが、そもそも火災保険適用範囲はかなり広いのです。

Q:火災保険とは?
A:建物や家財道具に掛ける保険です。

Q:災害の種類は?保証内容は?
A:自宅の火災だけではなく、火災・破裂・爆発・風災・雪災・雹災等々、基本の火災保険でカバーできる範囲はすごく広いのです。

簡単に火災保険を表すとこのような保険であり、厳密に言うと火災保険にも色々と種類がありますが、本稿では割愛します。

本記事で言うところの台風は風災に当てはまりますが、火災保険に風災が入っていないということはほとんどないので、台風等の強風によって屋根や外壁、雨樋に破損や飛散が確認されていれば、風災による火災保険適用という図式で問題ないと思います。

火災保険申請は必ずご自分で

「保険の申請って何だか面倒くさそう」「自分でできるものなの?」とご不安やご心配もあるかもしれませんが、被保険者として加入している保険会社か代理店の担当者から申請用紙をもらって、それを記入してその他の必要書類と共に提出するだけ、簡単に言うとこのようなご認識で結構です。

火災保険で検索すると検索画面上部のリスティング広告には、「火災保険申請代行いたします!」と謳ったものがありますが、それらは無視して結構です。
むしろクリックしないでください。

火災保険申請は被災した建物主自身が申請するものであり、私達屋根業者はもちろん、第三者である火災保険代行業者が申請するものではありませんし、そもそも専門的知識は不要です。
第三者は決して介入させず、わからないことがあれば保険会社か代理店の担当者に確認していただければ、申請から入金までスムーズに事は運ぶと思います。

実際に被害にあった状況をそのまま保険会社に伝達し、普通に書類を提出、被災した箇所の修繕費用相当額と保険会社が認めれば、何の問題もなく保険金を受け取れるものなのです。

火災保険申請に必要な書類とは?

【お客様ご自身がご用意するもの】

・事故状況説明書
・保険金請求書
(共に保険会社から入手して記載)

【お客様が業者経由でご用意するもの】

・被害状況の画像
・破損等修繕見積書(見積書備考欄に被害状況報告を記載、見積書件名は台風被害屋根修繕、修理にするとスムーズ)

以上4点です。

保険申請から入金までの道程

①台風等の強風によって、建物に損害を確認したら保険会社へ電話、被災状況を報告。
(保険代理店の方がスムーズ)

②事故状況説明書、保険金額請求書を入手。

③業者選定(相見積り可)

④業者に被災画像を撮ってもらい、同時に見積書も作成してもらう。
4点の提出物を揃えて提出。

⑤保険鑑定(被災規模から見て申請金額の妥当性があれば、画像のみ確認で保険員が実際には来ないこともあります)

⑥問題がなければ入金(申請から10日前後程度が目処ですが、災害規模によっては数ヶ月)

申請から入金までのプロセスはこのようになります。

ここまではちょっとググればどこのサイトにも記載されていますが、専門業である弊社の場合はもう少し専門的にお伝えしておきます。

3つのこと、その①

STEP1 焦ってはいけないのはもちろんですが、スピード感を持って申請、業者選定、修繕を目指しましょう!

災害規模によりますが、お客様の地域一帯は申請者多数であり、保険会社のスピード感も気になりますが、そもそもその申請は被害を受けた箇所の修理修繕のためでは?
お客様の大切な夢のマイホームが台風や強風等の風災に破壊され、修繕の第一段階である雨養生を必要としているわけです。

台風24号でも実際そうでしたが、弊社のような屋根専門業者、工務店には台風翌日朝から電話はリンリン、メールは着信音鳴りっぱなし、このような状況でした。

そうです。被災者はお客様だけではなく、他にもいらっしゃる関係上、既に修繕の順番待ちは始まっているのです。

当然、大切な自宅ですからどこの業者でもいいとは思えませんよね?
でも、どこに頼んでいいかわからない、これも理解できます。

こういった場合は先ずは優先順位を設けましょう。

①被災した自宅から近い業者をWEBやタウンページ等で探す。

こういった状況の時は業者からいたしますと、近さは正義であり、地元優先という意識が働きます。

例えば、お客様が他者よりも遅く修繕依頼(雨養生の依頼)をしたとしましょう。
業者からするとああいった災害時は1日で数箇所雨養生で回るのはザラであり、その依頼が自分の会社所在地から遠かった場合、翌日や翌々日に回されてしまったり、地域外とされてお断りなんてことも珍しくないと思います。
実際に業者に断られ続け、たらい回しにされて何とか弊社にて承ったなんてことがありました。

これ、何でかと言いますと「近かったから」です。

他の依頼の行き掛けで雨養生ができるから、それ以外の理由はありませんでした。
「冷たい…」のではなく、弊社は既にパンク状態ですので逆にご迷惑になると思っているからです。
実際に手を付けた(雨養生)をしたとしても、実際の修繕は一ヶ月先、二ヶ月先まで埋まっていて、更にご依頼を受けてしまうと修繕日程の目処さえつかないので、ある一定程度までご依頼を受けると、近場の業者は上記の事情から心苦しくもお断りするようになります。

②WEBサイトを開設している業者を優先してみてください。

Q:「近場の業者が2社、どっちを選べばいいの?」

A:WEBサイトで業務内容が閲覧できるのであればそちらを優先してもよろしいでしょう。

WEBサイトがある=優良業者とは限りませんが、個人的には会社のご案内をしているということは、していない業者と比較して不特定多数の一般のお客様からのご依頼の用意があるということです。

1億総スマホ時代において、今や、WEBサイトは会社の名刺、営業の顔、企業案内と言っても過言ではないでしょう。

代表者やスタッフさんの顔入りの画像や、事例集が充実しているかもチェック項目になると思います。(←これ大事)

業者選定に役に立つ記事: 私なら屋根の修理・葺き替え・リフォーム業者をこうして選ぶ!

3つのこと、その②

STEP2 相見積りは多くても3社まで、2社でどちらにしようかな?がベストです!

これは簡単なことで、悩みすぎて決められず修繕の順番がどんどん後ろに回されるから以外の理由はありません。

先ずは1社を選定して雨養生込みで見積もり依頼をしてみましょう。
この時に大切なのは下記のとおりです。

・雨養生込で見積もり依頼はするが、実際の修繕は相見積りをして相場を確認する旨を事前に伝えること。

・例えば1社目に雨養生込で見積もり依頼をしたけれど、実際は2社目の金額や会社やスタッフや作業姿勢が気に入った場合は、雨養生分だけは別途支払う旨を事前に1社目に伝えること。

前者は「自分で依頼しておいて信用していないわけではありませんが、なにぶん初めてのことですし、貴社とその他2社までは見積もりを取りたいと思います。」と素直に真摯にお伝えください。

この際、「え?」なんていう業者はその時点で実際の修繕は選定しないようにいたしましょう。

1社目の選定方法は①のとおり、近いところから雨養生と見積もり依頼をしてください。

ここで言う相見積りの必要性は工事金額のことではなく、相見積りに付随した修繕方法の説明の仕方、そのわかり易さ、重ねて担当者の人柄を見るためです。

何故か?

先述ですが台風による屋根の飛散、破損、損壊は火災保険適用範囲内です。
そう。有り体に申し上げれば、今回お金を支払うのは保険料を納めてきた貴方ではなく保険会社なので、少々の価格差は良しとして、優良業者選定にこそ重きを置くことが重要だからです。
相場を逸脱した法外な修繕費用は当然ながら保険会社側でも却下になることもありますが、取り急ぎ2社を選定してその価格差が数万円ならば、会社規模や従業員数、腕のいい職人を抱えているならば誤差の範囲内と考えます。

工事金額の価格差より、確りと修繕してくれるかを相見積りによって見極める、ここを重点としてください。

3つのこと、その③

STEP3 業者選定は済んだ!修繕方法もOK!あれ?でも何でうちの屋根は飛んだの?

そもそも論ですが史上最強クラスの台風といえども、全ての住宅に飛散や破損が生じたわけではありません。
損害が生じた事象にはわけがあります。

健康診断、人間ドック、血液検査等々、人間は加齢と共に定期的に体の検査をするようになりますよね?
それでは貴方が若い頃はいかがでしたか?
私は会社等の健康診断はありましたが、人間ドックのような精密検査の類は当然受けたことはありませんでした。

何故か?

ただ単に若いからであり、その検査コストに見合うようなリスクが発見される可能性がかなり低いと思っていたからでしょう。

住宅も人間の体と同様であり、新築(幼少)から時間が経つと大自然に曝される外装(体)にはそれなりのガタが来るものです。
このガタを早めに発見することで住宅の損害(健康)を回避できる、住宅も人間の体も同様です。

本記事をお読みいただいている方々は、住宅の悲鳴に気づいてあげられなかったから重大な損害を受けた可能性を否定できないと考えます。

それであればよいきっかけ、タイミングと判断して損害を受けた場所、部位以外に今後飛散や破損等が生じないように、プロの目で検査をしてもらってください。
普通の業者であれば、有料の修繕と共に無料で点検をしてくれるはずです。

その点検で例えば「この屋根材は経年劣化が著しく確認できますので、修繕ではなく葺き替えのほうがいいと思います」等のご提案が業者から出た場合、保険会社から受け取る補償額を新規の工事の足しにできるケースもあります。(保険会社に要確認)

既にだめなものを修繕しても数年でまた飛散、こんなケースは珍しくもなんともありません。

大切なのは、損害を受けた→「直せばいいや」ではなく、損害を受けた→「今回直しても他のところは大丈夫なのかしら?」という臆病な思考なのです。