コロニアルからガルバリウムにチェンジ!カバー工法・重ね葺きの考察。
2015年4月8日
一般住宅で使われる屋根材を3種類に分けて考察する「◯◯の屋根のリフォーム・葺き替えの種類と時期」シリーズ完結編!
最後は少しタイトルを変えまして、「コロニアルからガルバリウムにチェンジ!カバー工法・重ね葺きの考察。」と題し、エントリーさせていただきます。
実は「板金の屋根のリフォーム・葺き替えの種類と時期。」というタイトルにしようと思いましたが、これだけガルバリウムでのカバー工法、重ね葺きリフォームが一般的になりますと、1つに絞って記事を書いた方が情報の供給側としましてはお伝えしやすいです。
既にエントリーした他の屋根材に関しての記事をお読みでない方は、以下のリンクから閲覧してみてくださいませ。
カラーベスト・コロニアル!屋根のリフォーム・葺き替えの種類と時期。
現在、一番使われている板金・金属屋根材はガルバリウムと言っても過言ではありません。ガルバリウム鋼板の特性を調査。
【ガルバリウム鋼板概要】
昨今の一般住宅において新築、リフォーム共に板金・金属屋根材のカテゴリーで一番使われているのがガルバリウム鋼板です。
端的に金属類の1つの種類だと思われていますが、実はガルバリウム鋼板というのは新日鐵住金グループの登録商標名称であり、素材名称です。
開発元企業はアメリカのBethlehem Steel Corporation(ベスレヘム・スチール)であり、1972年に生まれたアルミ亜鉛合金でメッキされた鋼板です。
画像出典元:株式会社 伸和様サイトより。
【長所】
・耐久性に優れているわりに他の板金・金属屋根材と比較すると安価。コストパフォマンスが高い。
・元は鋼板であり鉄ですが、表面がアルミ亜鉛合金で覆われているので錆びにくい(絶対に錆びないというわけではありません)。
・加工しやすく、坪当たりの材料が少なく工数を減らせる材料なので工期が短縮できる。
・製品にもよりますが施工後長期間メンテナンス(再塗装等)が必要ない(特に現在使われているガルバリウムの屋根材であれば長期間問題ありません)。
・他の屋根材と比較すると軽い。製品によってはスレート屋根と比較して約1/4の重さ、瓦屋根と比べると約1/10の重量という軽量さを誇るものもあります。
うーん。メリットばかり目立ちますね。
【短所】
・錆びづらいですが塗装表面等に深い傷がつくと錆びます(基材自体は鉄ですので)。細かな傷であれば錆の広がりはないと思います(経験上)。
・各メーカーの製品によりますが断熱性能は良くはありません。必ず遮熱・断熱に対応したガルバリウム屋根材を選んでください。
・雨音が気になる。以前よりは遮音性に富む製品が多くなってきましたが、それでも新築の場合は気になる方は多いようです(経験上)。
これは板金・金属屋根材全般に言えることですが、その薄さ故にやはり他の屋根材と比較すると音はします。カバー工法、重ね葺きの場合は気にならない方の方が多いです(経験上)。
一応、以前の板金・金属屋根材の主流だったトタン板(亜鉛鉄板)も比較対象として記載しておきます。
【概要】
亜鉛メッキ鋼板に強い塗膜が焼付け塗装されたもの。
昔の一般的な住宅であれば大体トタンです。ガルバリウムに押されて出番が少なってきた板金・金属屋根材です。
【長所】
・亜鉛鉄板自体が他の素材と比較して安価。一番安く上がる板金屋根材。
・加工しやすい材質なので工期が短縮できる。
・他の屋根材と比較すると軽い。
ガルバリウムと比べますとやはり長所の項目が減ります。
【短所】
・他の板金・金属屋根材と比較すると耐久性が低い。
・錆びやすい。
・10年〜20年で錆を防ぐために再塗装をしなければならない。その後5年前後を目安に再塗装のループ。ランニングコストは高い。
・遮音性はなく、雨音は気になります。
・遮熱性能は良くありません。夏場は熱いです。
うーん、新旧比較しますと短所が多いです。やはり現状を考えますと価格と見合った屋根材なのかもしれませんね。
ガルバリウム鋼板製屋根材は新築やリフォームにも使われる万能型。
先述ですが長期間メンテナンス不要、トタン屋根と比較して3〜6倍の耐食性で高耐久、錆びづらくそれなりに安価、そして他と比較して軽い屋根材とくれば屋根だけではなく、外壁材(サイディング)、軒先部の鼻隠しや妻側破風の化粧板、雨樋と用途は多種にわたります。
ガルバリウム鋼板の屋根材と言えば、昨今ですとカラーベスト・コロニアルのアスベスト問題から端を発したカバー工法・重ね葺きで知ることになった方々もいらっしゃるかとは思いますが、新築時でももちろん使われています。
メンテナンスのランニングコストはスレートよりコストカットできますので当然ですね。
正に万能型の屋根材なのは言うまでもありません。かなり優等生タイプです。
ガルバリウムの屋根の短所・デメリット。雨音(遮音性)と断熱をどうするか?を考察してみます。
ここまでくれば新築でもガルバリウム!リフォームももちろんガルバリウム!カバー工法・重ね葺きもガルバリウム!
といきたいところですが先述のとおりスレート、瓦もそうですが屋根材には一長一短、メリット・デメリットはあるわけで、万能型のガルバリウムも同様です。
ガルバリウム(板金、金属屋根材全般に言えますが)の場合はやはり雨音と断熱をどうするか…。ここを何とかすればスレート屋根材は元より、瓦の優位性を論破できて正に万能型で一番オススメできる屋根材になるわけです。
遮熱と断熱は混同されがちですが違います。
【遮熱とは】
日射(太陽からの放射エネルギー、いわゆる太陽光、日光)を屋根材自体が吸収しないように塗料等で熱を反射し、その日射の熱を生活空間である部屋内に入れないように跳ね返すことを遮熱と言います。
熱を反射させれば屋根材自体はその熱を吸収しずらくなり、結果部屋内に熱を通しづらくなります。
高層ビル群に囲まれているわけではないので、屋根には必ず太陽光が当たります。
反射させて表面温度を抑える。
何となくお解りになりますか?遮熱は外側では行うものなわけです。
これを遮熱効果と言います。
【断熱とは】
文字通り熱を断つわけですから熱をシャットダウンするということです。
遮熱効果で屋根の表面に受ける熱を反射させ、格段に熱を受けづらくしても少量の熱はどうしても屋内へ熱伝導、熱移動します。
その熱を小屋裏断熱やガルバリウム屋根材の裏側に断熱材を施し、屋内への熱を遮断するというのが断熱です。
遮熱は屋根や外壁の表面側(外側)でするものですが、断熱は屋根や外壁の表面の内側で行うものです。
よく言う冬は暖かく、夏は涼しくは断熱(気密性も密接に関係していますが)の最たる例であり、これを断熱効果と言います。
断熱と遮熱は全く違うものではなく、2つで1セット、同時に効果を狙うことで生活空間を快適にすることができます。
ガルバリウムの屋根材にする時のポイントは?
上記のとおり、表面は遮熱塗装されているもので、材料の裏側に断熱材が付いているものをお選びください。
現在出回っているいわゆるガルバリウム鋼板の屋根材というと遮熱・断熱対応品だとは思いますが念のためご確認を。
安価なものですと断熱材は付いているけど表面が遮熱ではなかったり、逆もありますので施工店が選定する材料の説明を必ず受けてください。
メーカーの定尺物で遮熱も断熱も期待できるものはそれなりの価格になりますが、それでも2倍高いというわけではないのでその後の快適さを実感できるそれなりの製品をお選びください。
遮熱・断熱より遮音性(雨音)の方が対応しづらいです。その理由とは。
これが一番悩ましい問題なような気がします。
人それぞれ感覚的なものもありますし、それこそ神経質であったり聴覚の敏感さも様々。
一概に「こうすれば!」「このメーカーのこの製品!」というのは難しいと思っています。
弊社サイトに記載する際、ソースにしたいメーカーサイトも「遮音に対してこういう材料を使って〜」とは記載していますが、何しろエビデンスは不足しています。
同じ環境で気にならない人も、気になる人もいますしね…。
弊社オフィシャルサイトで公式にどんな環境においても「こうすれば!」と不特定多数の方々に解決策を提示できないのは悩ましいのですが…。
あまりいい加減なことは記載できませんしね。
個人的には先述の断熱材が付いているガルバリウム屋根材であって、新築工事ではなくカバー工法、重ね葺きであれば断熱材自体の厚さ(と言っても結構薄いです)と既存スレートの厚さで雨音は軽減できるとは思います。
経験上で恐縮ですが雨音に関してはあまり気にならないお施主様が多い気がします。
板金屋根の遮音性の低さは、板金屋根材の良さでもある薄さが関係しています。
雨が降る→雨が屋根材に当たる→雨粒が屋根材に当たる衝撃により屋根材自体が振動して、その振動音が屋内に響くというのが、板金屋根の雨音のメカニズムだと思います。
スレートや瓦の場合は表面が振動しづらい物質で製造されておりますので、板金と比較して振動はあまりしません。
上記を踏まえて考察すると断熱材付でそれ自体が遮音効果を伴う、もしくは遮音シート入りの屋根材で施工しても気になる場合は、小屋裏で何かしらの遮音対策をしなければなりませんが、二期工事として別途遮音対策の工事のコストを考えますとかなり高額になると考えます。
これは断熱に関しても言えることですが、断熱材付きのガルバリウム屋根材でカバー工法、重ね葺きをしても、想像するよりも夏場の部屋内が暑い場合は別途で小屋裏断熱を見直すことも想定しておかなければなりません。
個人的な経験上では断熱・雨音に関してのクレームはないのですが、ネット上で見ると難しいところでもありますね。
昔のトタンのイメージから心配されるものもあったりするかもしれませんし。
上記のことからルーフワークスの結論としましては、ガルバリウムの屋根材はリフォームに有効な屋根材ではありますが、真の万能型ではなくやはり他の屋根材と同じく一長一短があり、どの屋根材のいいところを取り、どの屋根材の短所を切っていくかであり、万能なガルバリウムでさえもトレードオフは解消されないのではないかと考えます。