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瓦屋根のリフォーム・葺き替えの種類と時期。

前エントリーではカラーベスト・コロニアル!屋根のリフォーム・葺き替えの種類と時期。と題しまして、いわゆるスレート屋根材に対するメンテナンスの種類や対処する適切な時期、そして製造メーカーのサイトを参考に検証してみました。

その記事に一般住宅において使用される屋根材を紹介させていただきました。

①スレート系(検索ワード:カラーベスト、コロニアル。検証済みです。未読の方はこちらからお読みいただけます)

②瓦

③板金(未検証)

ということで今回は瓦屋根のリフォーム・葺き替えの種類と時期と題しまして、様々な角度、情報から検証していきましょう。

瓦を原材料で大まかに分類すると5種類です。

先ずは最初に瓦の大まかな分類を箇条書きでご説明させていただきます。

①粘土瓦(いわゆる”瓦”はこれが主流です。)

②セメント瓦(瓦屋としては大枠で厚型スレート、コンクリート瓦等も含めます。)

③金属瓦(銅、鉄、アルミ、鉛等々)

④ガラス瓦(トップライト、天窓の代わりに平部に葺くことがありますが、最近は使われません。)

⑤石瓦(福井県の丸岡城が有名です。)

以上の5種類で大まかに分類できます。
一般住宅で使用されているのは①と②です。

次は様式で分けてみましょう。

①和形(読み方:わがた。日本瓦、J形瓦。)

②洋形(読み方:ようがた。洋瓦、M形瓦、S形瓦。F形瓦。)

様式で分類するとこのように2つに分けることができます。
首都圏や大都市圏ですと建築物自体、洋式が多くなったために昨今では洋形が多くなったように思います。
その反面、地方ではまだまだ日本家屋が主流であり、瓦の日本三大産地(愛知県の三州瓦、島根県の石州瓦、兵庫県の淡路瓦)を主としてJ形の地瓦(その土地で製造される瓦。その地域の気候風土に合わせて、伝統的にさまざまな工夫がなされています。)で屋根を葺くというのが一般的とも言えます。

次は瓦の形状で分けてみましょう。

①和形(J形瓦、”J”はJapaneseに由来。)

②洋形(M形瓦、F形のMタイプとも言います。欧風な感じ。一枚の瓦を下から見るとM字に見えることからM形瓦。)

③洋形(S形瓦、”S”はスパニッシュに由来。)

④洋形(F形瓦、平板瓦。フラットに由来。)

こう見ますと現代においての洋形は多種多様に姿形を変えているのがわかります。
それだけ製造に関する技術開発や設備の進化が窺えますね。
やはり家屋の洋式化が進んでいるとも取れます。

瓦の特徴。長所と短所。

長所としまして先ずは何と言いましても高耐久であるということです。
これに関しましては現在使用されている屋根材でも飛び抜けていると考えられます。
「瓦は一生もの」と言われますが、確りと適時にメンテナンスを施せば40年〜50年でも問題ありません(セメント瓦は除きます)。

そして優れた断熱性です。
瓦屋根はその工法上、形状から屋根の下地(野地板)と瓦との隙間ができます。これが空気層の役目になって、直に部屋内に熱を通さないようにしています。
正しく断熱であり熱を遮断してくれる優れた屋根材です。

瓦自体の表面が色褪せずランニングコストが掛からないというのも魅力ですね。
ご自宅の景観を気にする方ならばスレート屋根材はもちろん、高耐久を謳うガルバリウムでさえ30年を超えれば再塗装は必要だと考えます。
粘土瓦に関してはそれが全く必要ありません。
景観上、経年による良い雰囲気を出してくれるというのも瓦の魅力です。

短所としましては、やはり重いことでしょうか。
ですが新築時に瓦が載っている場合は、そのことを考慮して構造物や壁の計算をしていますので余程古い家屋でなければ問題ないと個人的には考えています。

そして他と比較(スレート材・金属屋根材)して最初のコストは高価です。
金額にして1.5倍から物によっては2倍といったところでしょうか。
ですが先ほど記載したようにランニングコストは格段に下がります。
これを考慮すると総合的には、やはり粘土瓦は日本の気候や風土、経済的ですし一番良い屋根材と言えると思います。

製造メーカーや職人が考える瓦屋根における推奨メンテナンスの種類と適切な時期と年数は?

先ずは瓦屋根に対してのメンテナンスの種類を箇条書きで記載いたします。

①瓦のズレや破損のチェックをして、問題があった場合には部分修理及び復元。

②各棟部の漆喰や熨斗瓦や丸瓦の欠損や破損をチェックして、問題があった場合には一度棟を崩して再度復元する棟の取り直し工事。

③瓦自体は高耐久ですがその中の資材(下葺き材・ルーフィング、瓦を引っ掛ける瓦桟)は物によっては高耐久ではないために、1回瓦を全て剥がし、下葺き材から瓦桟までを新しくして、その後載っていた瓦を元通りにする葺き直し工事。

④瓦自体はまだまだ使えるものの耐震性を優先して、他の屋根材に葺き替える。又は違う瓦を載っける葺き替え工事。
※瓦にカバー工法と呼べるものはありません。
大きく分けましてこの4つです。

ではメンテナンスの種類の次は、そのメンテナンスを施すのに適切な年数を上記の①〜④に合わせて箇条書きで記載いたします。

①新築時から数えて5年後〜10年後に一度無料点検を受けて、その時に問題があった場合は適切に対処。または大きな台風や地震が起こり、家屋に雨漏りや目に見える破損や欠損が見受けられた場合には早めに対処してください。

②20年前後を目処に無料点検を受け、問題があった場合には漆喰の塗り直し工事か棟の取り直し工事を実施。

③例えば瓦屋根で雨漏りが発生した場合、何かしらの事象で瓦内部に雨水が侵入し、2次防水である下葺き材の経年劣化により雨漏りを防げなかった可能性がある場合。
使用している下葺き材の防水寿命を考慮して、必要であれば葺き直し工事を推奨。25年〜35年を目処に。

④家屋が古くなり耐震性に不安を感じたり、屋根を軽くしたい場合(屋根を軽くする=耐震化ということではありません)。年数で言いますと30年後〜40年といったところでしょうか。
この辺りは専門家のアドバイスを仰いでください。

実は関東では瓦屋根の瓦1枚1枚は桟木に引っ掛けて置いてあるだけです(阪神・淡路大震災以前の家屋は特に)。

③と④に深く関係していることを少しご紹介させていただきます。
阪神・淡路大震災以前の建物の多くは、瓦を釘で留め付けるということをしておりません。
ハウスメーカーでも全数釘打ちではなく、数段(3~5段おき等)は釘打ちがされておりません(メーカーにもよるとは思いますが)。
以前は関東は引っ掛け葺き、関西は土葺きが主流でして、そのどちらも釘で留め付けるということは必要最低限の部位以外あまりしていませんでした。
何故かと言いますと、釘で瓦を留め付けるということは下葺き材に過度に穴を開けることになるからです。
要するに下葺き材の質や材質の種類があまり多くなく、防水性能や雨漏りをさせないことに重きを置いていたからです。
今考えますとゾッとしますがこれは事実です。
阪神・淡路大震災以降、この災害を受けて全日本瓦工事業連盟(全瓦連)は平成11年改正建築基準法に則した瓦屋根の施工や設計に関しての工法の集大成である「ガイドライン工法」を1つの施工基準としてマニュアル化を実現させました。
膨大な実験データから導き出された”安心と安全”を追求した工法であり、耐震性・耐風性を格段に飛躍させた新施行基準です。
実は大手ハウスメーカー等は震災の後から順次瓦毎に全数釘打ち等、新たに設けた独自マニュアルを策定していましたが日本全国においての新基準はこのガイドライン工法が初めてだったのです。
これ以降は全瓦連の努力や呼び掛けに、日本全国の瓦施工者が呼応してこの1つの基準を順守するようになりました。

上記のことからガイドライン工法発表以前の瓦屋根は釘打ちがされているかいないかを無料点検でチェックし、その後全数釘打ち、ガイドライン工法に則った施工を葺き直し、葺き替え工事で屋根の耐震化をすることが望ましいと考えます。
たまに棟の取り直しだけ耐震化をする業者がいますが、そもそも平部において、又は棟との取り合い部の瓦が釘打ちされていないのに、棟だけ耐震化をしても震災クラスの地震が来たら瓦自体が抜け落ちてしまうと思うのですが…。
それは東日本大震災で栃木や茨城でも散々見ました。
棟は耐震化されていて残っているのですが、棟が載っているところの瓦が抜け落ちて異様な風景でした。

ご自宅の屋根の耐震化を検討されておられるのであれば、その辺も考慮しなければ万全ではありません。

瓦のリフォーム・葺き替え・葺き直しをお考えのお施主様は、ぜひ参考にしてみてください。

この動画は右側の建物が耐震化されたもの、左側は非耐震化の建物ですが実は2棟ともガイドライン工法で施工された瓦屋根です。 左側の建物は耐震化されていないのでもちろんペチャンコですが屋根は無事。 これが本当の屋根の耐震化というのではないでしょうか。

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